本解説の2節では,伸張型 LMI の基本的な 考え方を解説することを目的としてロバスト正則性の 解析問題を取り上げております. ここでは(2)式で表わされる標準的な LMI 条件に対し, 伸張という操作を施すことで(4)式の 新たな LMI 条件を導くことができることを 述べています.さらに(2)式が成立すれば(4)式が 成立することをもって(4)式の有用性を 主張しています.しかしながら,実際にはその逆,すなわち (4)式が成立すれば必ず(2)式も成立することが 確認できます. これは,(4)式が成立するためには, その(1,1)ブロックから必ず(2)式を満足する共通のマルチプライア が存在する必要があるからです. したがって,本解説中のこのロバスト正則性解析という 問題設定に限っては, 標準型 LMI 条件(2)式と伸張型 LMI 条件(4)式の 間に(保守性という観点からの)本質的な差異はありません.

伸張型 LMI の基本的な考え方を導入するために 取り上げた例題でしたが, 必ずしも適切ではない記述となっておりました. ここに修正致します.

2004年9月13日 蛯原 義雄